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e-cor エコール フランス語コミュニケーション教室

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        日々是々 フランス語とわたしの冒険

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フランス語の手紙 その2

June 5, 2007

その1で例に挙げたアルベール・カミュとルネ・シャールの書簡集。 ジャンルは違えど、二人の「auteurs(オター、著者)」が綴るフランス語は、まさに生きたお手本になる。フランス語学習者にとってはあらゆる面で「使える」のではないかと思い、今回自分のFLE(フランス語教授法)の「l'écrit」(筆記)の教材として取り上げた。

フランス語の手紙でまず考えなければならないのは、「距離感」。 相手との親しさの度合いにより、文体も変わる。使える「モード(mode、法)」も変わる。 距離感を出すとニュートラルで複雑な文体になることが多い。 個人的な感情や事情をできるだけ押さえ、ベールに包んだ表現をするから、恐ろしくまどろっこしくなる。 必要以上に踏みこまない礼儀。 難しいのはそのニュートラルな文体の中でいかに相手に自分の想いを伝えるかで、お役所の送ってくるような手紙で初めて個人とコンタクトを取るのはかなり味気ない上に、貰ったほうもどうしていいか困ってしまう。

シャールは一番最初の手紙で、馴れ馴れしくなく、うやうやし過ぎずにカミュへの熱烈なる賛同を短い文章で記し、更に「会ってお話したい」という希望もきちんと伝えている。 それに対するカミュの返事は、更に気遣いの含まれた内容でさすが、と思わせる。 シャールとまだ完全に親交を結んでいない状態なので、ニュートラルな文体は変わらないのだけれど、ちらり、ちらりとシャールに対する好感を言葉尻に含めて、快い返事が返ってくるだろうか、とドキドキしているだろうシャールを安心させるように、自分は不快でないこと、シャールの申し出をうれしく思うことを伝える。 この二人は、その後ぐっと親しくなるのだけれど、最後まで「vouvoiement(ヴヴォワモン、Vousで会話すること)」を続けた。 確かに、昔はノーブルな家庭では親子でもvousを使っていたし、「同士」が流行っていた当時としては互いに尊敬をこめてvousで話すのが普通だったのかもしれない。 それに、二人の男はただの人じゃなくて、時代を代表する詩人と未来のノーベル賞作家だったわけだし。

vousを使いながらも、親しさを表現する方法はこの本の中にちりばめられている。相手の健康を気遣う言葉、相手の新作に対する熱い賞賛、どれもさりげなさの中に温かく表現されている。これは、書き手の巧さもあるけれど、受け取ったほうの読解力の高さも必要になる。 たとえば、カミュがシャールの新作を評価する時に、心を打たれただのすばらしいだのという月並みな表現はほとんど使われない。では、どうするのかというと、 シャールの作品の抜粋を手紙の中で使う。 これにより、一言も賞賛の言葉を加えなくても、カミュがシャールの詩を読み、抜粋部分が特に気に入ったということを伝えている。 フランス人は一般的にほめ上手でお礼上手だ。それは、手紙の表現の豊富さからもよくわかるし、どんなにひどい出来のものでも良いところを見つめようとする。(逆に、けなし上手でもある。本当にイジワルにインテリジェンスを持って批判するのが巧い。) 彼らにとって、言葉の選択、表現力、読解力というのはその人自身のセンスと品格を問われる重要なアイテムなのだろう。

普段、日本語でメールを書いている時そんなつもりはなくても、自分のことばかりを相手に押し付けて、後で慌ててとってつけたように相手の様子を聞いたりするような内容で、自分でいやになってしまうことが多い。 カミュとシャールのように、相手の活動に心から興味を持ち、それに触発されてまた自分の新しい作品につながっていくという交換は本当に理想的だなぁと思う。そういう相手を一生のの中、一人でも見つけられたら、そしてそんな風に関係を繋げられる相手にふさわしい自分でいられたとしたら、それは幸せと言えるだろう。築かれた二人の悲しく美しい友情は死が分かつこともなく、人から人へと語り継がれて行くのだから。                      

* * *

カミュの事故の2日前、シャールはカミュの家に遊びに来ていた。帰り際、彼らの共作La Postérité du soleilについて話していた時、カミュはシャールにこう言ったらしい。

"René, quoi qu'il arrive, faites que notre livre existe !" 「ルネ、何があろうとも、僕らの本が残るようにしてくれよ!」

1960年1月17日、シャールはCiska Grilletに手紙を書いている。

"Tu penses que je t'oublie, n'est-ce pas ? Combien non ! Mais écrire à ceux que l'on chérit se fait,(me fait) mal. Ils vous habitent, et alors on leur parle. Comment est-ce que je vis par ailleurs ? Je n'en sais rien. Je suis venu ici pour - après avoir passé une journée avec lui ! - ensevelir Camus. Etrange monde. Présence absence, Royaume de l'éclaire et du chagrin. Prenez bien garde à vous, Ded et toi. Je vous en prie."

「僕がきみの事を忘れたと思っているだろう?違うに決まってるだろ! けれど、愛しんだ人々について書くということは、(僕)自身を苦しめることなんだな。彼らは君らの中に住んでいるんだよ、だから僕らは彼らに話しかけるんだ。そうでなけりゃほかにどうやって僕が生きていられるんだい?僕にはわかんないよ。ここに、 ― 彼と一日過ごした後で ― 僕はカミュを埋葬しに来たんだ。奇妙な世界だよ。存在、不在、光と悲しみの王国だ。どうか身体を大切に、デッドときみ、二人とも。お願いだから。」(抜粋はすべてCorrespondances Camus - Char 1946-1959, éd.Gallimard, 2007より、抜粋部分の訳はまりによるものです)

In Labor 学 Tags フランス留学記, 文学
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