ガマ好きのルーツ

財布をガマ口に替えた。そうすると、鞄の中の小物入れ(メイクポーチ、薬入れ)が全部ガマ口。ちょっと壮観。 そこまでガマラブのつもりはなかったんだけれど、これでは言い訳できない。 しばらく忘れていたが、私がガマ派になったのは、そもそも高校を卒業して上京した頃にこれを見たからで・・・(ジャン=リュック・ゴダール監督「勝手にしやがれ」)

本当になんでもないシーンで(ジーン・セバーグが出るシーンではなかったからYouTubeで探してもやっぱり出てこなかった)、朝ご飯を食べるお金もないチンピラのジャン=ポール・ベルモンドが、タカリに行った女の子の着替え中に財布からお金を盗む、それがガマ口だった。 女の子がワンピースをかぶり頭が出なくてモタモタしているのを見計らい、太いゴロワーズをくわえたベルモンドがタンスを開いて洋服の間に挟まっている財布を探り出し、ごっつい指でパカっと開いて、中からくしゃくしゃのお札をぐしゃぐしゃと出してあわててポケットにつっこむ。財布を元の棚に滑り込ませると同時に、女の子がやっとワンピースから顔を出し、絶妙のタイミングでくるっと彼の方に向き、にこっと笑う。 これがチャックの財布だったらここまでこのシーンが私の中で焼き付いたりはしなかったんじゃないかと思う。「私もパカっと開いて中からぐしゃぐしゃっとお札を出したい!」と熱に浮かされたようにそのことばかり考えた。 留学する直前に、たまたま新宿の京王デパートを歩いていてラ・バガジュリーのガマ口を見つけた。お陰でフランスでは思う存分パカっと開いてはグシャッとやっていた(ユーロ札は柔いのでくしゃくしゃにし易い)のだが、あまりやり過ぎたのかあっという間に財布はすり切れ、3年で壊れてしまった。それで、現在は薬入れにしている小さな黒い小銭入れに無理矢理お札を折り畳んでいれていた(グシャッとやると一枚しか入らない)。母に貰ったこの布製のがま口はビーズの刺繍がしてあって、ナントの各スーパーのレジのお姉さんに大変評判が良く、「可愛いですね~、どこの?」「日本です」「あー・・・(こっちじゃ買えないのね)残念!」と、よく声をかけられた。 意外に思われるかもしれないのだが、私はわりと鞄の中を整理する方で、無駄なレシートやポイントカード類は一切持たない。本当ならポケットに入れて手ぶらで歩きたいくらいなんだけれど、それは幾ら何でもパチンコに行くおっさんのようなので自重している。 ゴダールの映画は難解すぎて付いて行けないものもあるけれど、初期のものにはやっぱり影響を受けた。ところで、「勝手にしやがれ」を検索するとジュリーばかり出て来てしまうのですが、原題は「A bout de souffle (ア・ブゥ・ドゥ・スゥフル)」息もきれぎれに、という意味です。